八ヶ岳山麓の自然の中で

(山荘の窓辺で綴る随筆です)


親 は 強 し

毎日餌台に来るリスが先日餌台から帰る途中に何を思ったか木の梢から幹を下りてきて、幹の途中に取り付けてある巣箱を、しきりに眺め始めました。 その巣箱ではシジュウカラが雛を育てていました。

近くの枝から心配そうに見ていたシジュウカラは、リスが巣箱の屋根に座り込み首を突き出して巣箱の入り口を覗き始めると、 意を決したようにリスに攻撃を仕掛け始めました。攻撃といってもシジュウカラとリスでは体の大きさがまるっきり違います。 リスにダメージを与えることは出来ません。でもシジュウカラはくちばしをまっすぐ前に突き出してリスに突き刺すような勢いで 突っ込んでいきます。 そしてリスの直前で急旋回します。急旋回といっても、ツバメのようなきれいなターンではなく、羽で急ブレーキをかけるような姿勢で羽をばたつかせ、 リスの顔を羽で打つような状態で飛び去ります。これをつがいの二羽が交互に繰り返しました。

しばらくするとリスはわずらわしく思ったのか巣箱から1メートルくらい離れましたそれでも未練がましくじっと巣箱を見つめています。 そしてまた巣箱に近づき巣箱の横をガリガリと爪を立てて上がり又屋根に座りました。シジュウカラは前にも増して威嚇攻撃を繰り返します。 根負けしたようにリスは巣箱から又1メートル位離れしばらくじっとしていました。十数秒後リスは巣箱のことを突然忘れてしまったかのように いつものような速いスピードで木の幹を駆け上がり、高い枝から枝へと伝ってあっという間に視界から消えてしまいました。

リスは今までも季節を問わず巣箱に時折興味を示して巣箱の回りを這い回ることがありました。 何のための行動かはよく分かりませんが、 自分の巣として使えるかどうかを確かめているように私には思えました。今回のリスの行動もリスにとっては「調査の一環」に過ぎないのかもしれません。 でもシジュウカラにとっては一大危機が訪れたように思えたことでしょう。

シジュウカラの果敢な攻撃は短い時間でしたが感動的でした。親が子を守るため自分より大きな相手に立ち向かうシーンをテレビで時々見ますが、 目の前で必死に子を守る親鳥の姿を見ると、テレビで見るのとは違った感動を呼び起こしました。 時間が午後6時を過ぎており薄暗いため写真撮影が出来なかったのが残念でした。

 
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