八ヶ岳山麓の自然の中で

(山荘の窓辺で綴る随筆です)


木登り出来るか

リスの貯食について以前にも書きましたが、餌台に来るリスがクルミをくわえていくと今度はどこへ隠すのだろう?と 思いながらリスの姿を目で追うことが多くなりました。視界から消えてしまうことが多いのですが、時には一心に餌を隠すところを観察できることもあります。

先日クルミをくわえていったリスはベランダから降りて、地上を走り、とある大きな木の根元に来ました。根元付近の土を少し掘って「ここは駄目だ」と 思ったらしく周囲をキョロキョロ見て20〜30センチ位はなれた場所を再度掘り始めましたが、またもや具合が悪かったらしく、 もう少しはなれた場所を再々度掘り始めました。今度はうまく掘れたらしく、くわえていたクルミを埋め、土や落ち葉をその上にかぶせました。

ベランダから見ていた私はビデオチャンスだ!と思い途中からビデオカメラで撮影始めました。 ベランダから身を乗り出すようにして構えていました。 距離にして7〜8メートルくらいです。

リスはクルミを埋め終わると周囲を見回しました。そして私がベランダからビデオカメラを向けているのに気がつきました。 リスは「しまった!隠し場所がばれてしまったか!」というような表情(?)をして、あわてて埋めたばかりのクルミを掘り出し、 口にくわえ直して走っていきました。数メートル位走って今度は木を登って行きます。 10メートル位の高さまで登ったとき枝分かれしているところに少し窪みがあったらしく、そこへクルミを隠しました。

隠した後、今度は私の方を見向きもしません。私をまったく無視しています。隠し場所を見ているのになぜ今度は気にならないのでしょうか? 私のほうが気になってしまいます。どうやら人間が高い木の上まで登れないことを知っているようです。 リスは今度の隠し場所は絶対安全だと確信している様子で、周囲に目を向けることもなく、木の梢までのぼり、 いつものように体操選手のような身軽な身のこなしで枝から枝へと飛び移り森の奥へと去って行きました。

またまたリスに感服です。人間が木登りできないことをリスが知っていたとは思いませんでした。リスを馬鹿にしてはいけません。 かなりの知能を持っているのです。

 
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