八ヶ岳山麓の自然の中で

(山荘の窓辺で綴る随筆です)


勇敢な(?)鹿

八ヶ岳山麓の道路は車の通行量も少なく、交通事故などはあまり起きないように一般的には思えます。しかし車が少ないからと思って油断はできません。 事故は意外な形で起きるのです。 昨年、八ヶ岳山麓の清里高原道路を数台の大型バイクがツーリングしていたとき、 道路に飛び出した鹿を避けきれず1台が衝突横転して重傷を負う事故が新聞で報道されていました。おとなしそうな鹿が加害者に変身するのです。

鹿が道路を横断するときは人間のように右を見て左を見て安全を確かめて渡るなどという悠長なことはしません。 とにかくいきなりバーッと渡るのです。車の数メートル前でも突然道路わきの林の中から飛び出して渡り始めますから、こちらはびっくり仰天、 急ブレーキとなるわけです。

鹿の群れが道路を横断するときは必ず縦一列で渡ります。先頭が渡り始めると前に続いて次々と渡り始めます。 車が来ても何のその、全員一列で一気に渡ろうとします。これではたまりません。こちらの急ブレーキが間に合わなければガツ〜ンと ・・・ いや,ドス〜ンという感じでぶつかることになります。車は壊れます。鹿も足の一本や二本は折れます。どちらも大変です。

鹿の群れが数十頭の場合は道路の横断が途中で途切れ、車が通過してからまた渡り始めることがありますが、数頭の群れが一番やっかいです。 止まらないのです。前だけを見て次々一生懸命横断して行きます。なかには車に戸惑い、急ブレーキで止まった車の前で立ち止まったり、 車の前をウロウロしたりする気の弱い(?)鹿もいます。でも大半は勇敢に車をものともせず横断していきます。

日中、鹿が道路を横断することはあまりありませんが、夕闇が迫った頃から夜明け前までの夜間の時間帯は頻繁に道路を横断するようです。 ヘッドライトだけが頼りの谷あいのカーブが続く道で、ヘッドライトのなかに突然浮かび上がる鹿の行列!ハンドルを握りしめ、 急ブレーキを踏むスリリングなドライブは、人里はなれた山麓ならではの体験かもしれません。

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