八ヶ岳山麓の自然の中で

(山荘の窓辺で綴る随筆です)


伝統料理

ヤマガラやシジュウカラなどの餌としてピーナッツを置くと喜んで集まってくる、と以前この欄で書きましたが、もっと喜ぶ餌があります。 それは蛾の幼虫や成虫です。このような生餌を置くと餌台がいつもと違うことにすぐ気がつき、カラ類は殺到するように集まってきます。

しかしこのような生餌を沢山捕まえるのは容易ではありませんが、我が家にはこの生餌を捕まえる最新兵器があります。 前回この欄で書いた「電撃気絶器」です。夕方新兵器の電源プラグをコンセントに差し込んでおくだけで、朝、底蓋をはずせば大量の生餌が溜まっています。 餌台にそのまま 置いておけば、人気沸騰で数分で売り切れてしまいます。しかし食べられる蛾も必死です。 カラ類が次々やってくる合間に死力を尽くして羽ばたきをして飛び去っていく蛾もいます。時には餌台から羽ばたきして まさに飛び出す寸前にヤマガラの嘴に捕まってしまう蛾もいます。元気な蛾ほど先に捕まる傾向がありますから生きのびるのは大変なことです。

カラ類はエサを嘴ではさんで飛び去ることが多いのですが、時々餌台で料理をして食べてしまい、もう一匹をくわえて飛び去るちゃっかりものもいます。 この餌台での料理の仕方がカラ類によっていろいろ違いがあり、興味深いものがあります。

もっとも丁寧な料理をするのはヤマガラです。ヤマガラは蛾を足で押さえて、クチバシで羽をつついて落としていきます。 うまく落ちきれないと食いちぎります。4枚の羽が完全に取り除かれると蛾の本体をサッとくわえて飲み込みます。 シジュウカラは蛾の胴体部分を縦にくわえて、止まり木に蛾をこすり付けて、こそげるようにして羽を取り除きます。 一度や二度では取れないので何度も何度も左右にこすりつけて羽を取り除きます。羽が取れるとヤマガラと同じようにサッと飲み込みます。 ゴジュウカラはそのような面倒なことをしません。蛾を羽が付いたまま頭から丸呑みします。 飲み込む途中で口からはみ出している羽が強制的に取れて大きな羽は外へ落ちていきます。かなりアバウトな食べ方です。

餌台に来るヤマガラやシジュウカラ、ゴジュウカラの蛾の食べ方はいつも上に書いた通り同じ食べ方をしますが、 以前テレビの野鳥番組でヤマガラのような食べ方をするシジュウカラを見たことがあります。 生息地域によってヤマガラやシジュウカラの蛾の食べ方が異なっているようです。  野鳥の世界では地域、地域によって親から子へ独特の料理の仕方が脈々と伝えられてきたのでしょう。  ここ八ヶ岳南麓のヤマガラやシジュウカラも 独自の伝統料理(?)として蛾の食べ方を 代々伝えてきたのかもしれません。

 
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