八ヶ岳山麓の自然の中で

(山荘の窓辺で綴る随筆です)


頑張れよ!

餌台に見慣れない野鳥が止まっていました。一瞬ゴジュウカラのように見えたのですが、くちばしが長くなく目の前後に伸びる黒い線もありません。 よく見ると背中がわずかに茶色になっています。腹の付近も一見白っぽく見えますが、僅かに茶色に見えます。・・・・・・  な〜んだ! ヤマガラではないか。種類が分かるとなぜか一安心するのです。このヤマガラは一瞬他の野鳥と勘違いしそうなほど茶色が退色していて 羽毛も少なくやせた感じがします。見た感じが弱弱しく、これで十分に飛べるのかなぁ と少々心配しながら見ていました。

一見みすぼらしいヤマガラ君の餌台での餌のとり方が少し変わっています。餌台にはイカルが食べた種の殻が沢山あります。 それらの殻は縦に割れていて、うつ伏せだと一見普通の実の入っているヒマワリの種のように見えます。 このヤマガラはその中身のない種の殻を くちばしで挟み、止まり木で足の指の間に挟みなおしてくちばしで種をつつきます。一度つついてその種が空であることに気づいて捨てて、 餌台へ降り、種をくわえて又止まり木に止まり、くちばしでつつきます。そしてまた空に気づいて種を取るために餌台へ降りるのです。  これを繰り返して5回目にやっと中身のある種を掴み、食事にありつけました。

他のヤマガラやシジュウカラは殻をくちばしで挟んだ瞬間に空と分かって捨て、他の種を探します。多分、重さや硬さで判断していると思われます。 このヤマガラはそのような判断能力がまだ身についてないのかもしれません。ヤマガラはカラ類の中では賢い部類に入りますから、 すぐに学習して ヒマワリの種を選別して 掴めるようになるだろう、と思って観察していました。

この日は3回餌台に来ましたが、その都度3〜5回失敗してようやく実の入った種にありついていました。頑張れよ!早く学習するんだよ! と内心一生懸命応援しましたが結果は変わりません。 翌日は餌台に来たのを4回見かけました。 相変わらず中身のない殻をくわえて足で挟んでいます。 こりゃー アカンワ! 嘆息しました。

餌台から飛び去るときのスピードは他のヤマガラと変わらない速さだったので、飛翔能力は悪くないようです。でも学習能力がこれほど低いと、 自然界で果たして生きていけるのか?と心配になってきました。 3日目の夕方餌台から飛び去るヤマガラに「頑張れよー!」 とエールを送って見送りました。 しかし、その時を最後に、このヤマガラは姿を見せなくなりました。猛禽類に襲われたのか、何かに衝突したのか、 栄養失調で飛べなくなったのか ・・・・・
気がかりなまま、時が過ぎ去っていきます。

 
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