八ヶ岳山麓の自然の中で

(山荘の窓辺で綴る随筆です)


新 参 者

餌台に来るリスはいつも単独で来ていますが、今回二匹がつるんで来ました。リスにはテリトリーがあって、単独行動するのが普通ですから 2匹揃っての行動は非常に珍しい行動です。

いつも来ている雌のリスは悠々といつもの歩き方で餌台に飛び乗りエサを食べ始めました。餌台はリス2匹が有る程度離れて食べるだけの スペースがあります。しかし後からついてきたもう一匹の新参者のリスは常連の雌が餌台に上がったのを見ても自分は上がろうとはせず、 ベランダの手すりの上をウロウロするばかり。 手すりからベランダの上に降りて餌台から落ちたおちこぼれを探しては食べています。 餌台にあがった雌リスは先輩なのか、強者なのか新参者はすごく遠慮して慎み深く振舞っているようです。

常連の雌リスは悠々と食べ続けています。 10分ほどして常連のメスは餌台から降りて帰っていきました。もう一匹の新参者はようやく 自分の順番が来たと喜んで餌台に上がりました。しかしエサを食べようとはせず餌台の周囲をウロウロしていましたが、やがて餌台から降りて、 未練がましく周囲を何度も行ったり来たりした後、帰っていきました。

リスが去ったので窓を開けて餌台を覗き込んだら、新参者のリスがウロウロした訳が分かりました。餌台はカラッポなのです。 最初に来た常連の雌リスは後からついてきた仲間のためにえさを残すということは全く考えずに全て食べてしまったのです。 かわいそうに! と、すごすご帰っていった新参者のリスに同情してしまいました。

それにしても今回つるんで来た2匹のリスはどういう関係なのでしょうか?ひょっとして親子かもしれません。 リスは4月上〜中旬に子を産み5月中に巣立ちをするようです。すでに6月に入っていましたから、新参者は雌リスの子だった可能性があります。 しかしリスは通常3〜6匹生みますから一匹のみ連れてくるというのは考えにくいことです。親子の推測は外れかもしれません。

では新参者は常連の雌リスの彼氏だったのでしょうか。しかし雌と雄がともに行動するのは2〜3月の交尾の時期のみです。 巣立ちしてから彼氏が現れるのはやはり野生動物の世界では考えにくいことです。

その後この2匹は6月中に数十回餌台に来たのを見ましたが、つるんできたのは1回のみでいつも別々に来ています。 数分ずらしてくることも多く、互いに顔を会わせないように気を配っているかのようです。この2匹の関係はどのような関係なのでしょう? ギモンは深まるばかりです。

 
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