八ヶ岳山麓の自然の中で

(山荘の窓辺で綴る随筆です)


野鳥との戯れ

庭にいた時、傍のタンコウバイの枝にヤマガラが止まりました。 ポケットからひまわりの種を数粒取り出し近くの地面に投げると さっと枝から降りてひまわりの種をくわえて飛んでいきました。私から1mも離れていないのに人を余り気にしてないようです。 日ごろ餌台にえさを入れている私を見ているためか、ヤマガラにとって、この大きな動物は「えさ供給マシン」くらいの認識なのかもしれません。

そういうことが何度かあったある日、庭の手入れをしていると、いつものようにヤマガラが近くに来てチィチィ鳴きます。 えさをねだっているようですが素知らぬ顔をしていると肩に停まって耳元で鳴きました。ひょっとしたら、と思い、試しにひまわりの種を近くに投げずに 手のひらに載せて差し出すと掌に留まりサッとくわえて飛んでいきました。これは面白い! 庭仕事はそっちのけで「どーぞ、どーぞ、 遠慮無くいらっしゃい!」とサービスに努めました。よく観察すると3羽か4羽のヤマガラが交互に来ているようで、 他のヤマガラは近くの枝から様子を見ているようでした。

ヤマガラは始めて留まるときは留まった部分がどういう性質のものかを探るように
まずくちばしでつつきます。 手に留まるときも私の指を何度かつついています。各個体は大抵そういう行動をします。「木の枝に比べて随分やわいな」 という顔をしてつついています。 でも指はヤマガラのくちばしでつつかれても、指の筋肉に弾力がある為か穴が開いたり、傷つくことはありません。特に痛みも感じませんから、 そのままつつくのに任せています。

ところがある日のことヤマガラが頭に留まりました。そして手に留まった時と同じように頭をつついたのです。頭の皮膚は薄く、 筋肉のような弾力のある組織はなくすぐ下は頭蓋骨ですから、ここをつつかれるとものすごく痛いのです。まるでキリを頭に突き刺されたような 強烈な痛みで、思わず頭を振ってヤマガラを追い払いました。オイオイもっとお手やわらかに頼むよ、と言ってもいうことを聞いてはくれません。 仕方がないので頭を保護することにしました。保護といってもヘルメットなどというものすごいものは必要ありません。 普通の帽子で大丈夫。これで万全です。

以後安心して庭に出ていましたが、部屋に戻ってみると 肩や帽子の上には糞が付いているのです。野鳥は数秒も留まっていると糞をすることが多いのです。 鳥の糞はすぐ取らないと汚れが落ちにくくなります。これは参ったな、と思い又対策を考えました。セーター姿はやめて常にウインドブレーカーを 着るようにしました。これなら雑巾で拭くだけでOKです。帽子も捨てようかと思っていた古いものをかぶる事にしました。

野鳥と付き合うのはいろいろ準備や気遣いが大変です。

 
戻る