八ヶ岳山麓の自然の中で

(山荘の窓辺で綴る随筆です)


戦いは続く

春になり野鳥たちは今年も子育てに一生懸命です。庭の胡桃の木に取り付けた巣箱では、今年シジュウカラが巣作りをし、卵を生み、雛がかえりました。 親鳥がエサをくわえて巣箱へ運ぶ姿は何時見てもほほえましいものです。この胡桃の木に取り付けた巣箱でここ数年間に子育てしていたカラ類の雛が 青大将に襲われたことが何度かありました。もちろんその青大将は私がビシッと退治したのですが、青大将に襲われなくする有効な方法が分かりませんでした。

その後知人からヘビに襲われなくする有効な方法を教えてもらいました。その方法とは家庭用のゴミ袋を縦に裂いて1枚のシートにして、 気の幹に巻き、巻き終わりの部分をガムテープを小さくちぎって留めておくだけ、と言う簡単な方法です。ポリエチレンシートは紙などと違って 滑らかで表面に凹凸がない為、ヘビは木を登ろうとしてもポリエチレンのところで滑って進めなくなるのです。 これはよい方法を教えてもらったと喜び勇んで巣箱の木の地上から2メートル位の所に巻きつけました。 今年はシジュウカラの子育てを心配せずに見守ることが出来る、と安心して毎日観察していました。

ところが先日いつものように見ているとシジュウカラの様子がおかしいのです。巣箱の屋根に乗って、しきりに巣箱の入り口を見たり、 巣箱のいり口につかまって 中を覗き込んだりしています。しかし巣箱には決して入ろうとはしません。
    何かあったのだ、何だろう?
    ヘビか?
    しかしヘビは対策をガッチリしてあるので登れないはずだ、
などと自問自答しながら見守っていました。
20〜30分過ぎた頃巣箱の入り口から何か5cm位の棒状のものが出ているのに気が付きました。何だろう?双眼鏡で確認するとなんと青大将の頭なのです!!
エエッ!何故ヘビが・・・・・
そんなことがある訳がない。この木は登れないはずなのに・・・・・
頭が混乱してきました。

ヘビは20分ほど周囲の様子をじっと伺った後、そろりと巣箱から出てきました。あのポリエチレンのシートをどうやって通過したのか見極めようと思い、 見つめていると青大将は巣箱から出ると下へは行かず、なんと木の幹を上へ上へと上って行き途中で枝分かれしているところから 斜め方向の枝を伝ってさらに登っていきます。
地上15m位のところで隣の木から伸びていた枝に乗り移り、移動していきました。

そうだったのか、ヘビは隣の木から登り、枝を伝って上から巣箱に近づきシジュウカラを襲ったのだ。 さすが青大将、人間の裏をかくとはすごい! と驚きを隠せません。しかしこんなことで感心している場合ではありません。正義の味方として断固として敵を退治しなければならないのです。

しかし青大将は木の葉が密集している所へ入った為見失ってしまいました。きっと隣の木から下りるはずだ、 と考えさらにその隣の木も含め辛抱強く見張っていましたが、30分待っても降りてきません。 どうやら上の方で人の気配を感じて動きを止めてしまったようです。人間は30分も待つのはかなり苦痛ですが 青大将にとっては1時間や2時間待つのは全く平気なのです。 退屈という言葉は青大将の頭にはありません。

見張りは諦めました。今回は私の負けです。しかしこれで戦いを終わりにするわけにはいきません。青大将との戦いはこれからも続くのです。

 
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