八ヶ岳山麓の自然の中で

(山荘の窓辺で綴る随筆です)


高速Vターン

ゴジュウカラは目の付近にある細い黒のラインと細いくちばしのためスマートで精悍な感じがしますが、それは顔だけの印象で、 体のボデイラインはお世辞にもスマートとはいえません。まるでメタボのような太い腹回りを見ると これで飛べるの? といいたくなるような デブチン なのです。ところが、ところがです。 このゴジュウカラがすごい技を持っていました。 それは餌を食べるときに見られます。

餌台から持っていったひまわりの種は殻を割らないと中身を食べることが出来ませんが、この殻の割り方が他のカラ類と違っています。 種はくちばしで突いて割りますがその時、種が動かないように固定する必要があります。ゴジュウカラは他のカラ類のように足ではさんで固定するのではなく、 木の幹にある小さな割れ目に種を押し込んで固定してくちばしで突いて割るのです。

ところがいつもそのようにうまく固定できるとは限りません。固定したつもりで、エイッと突いたとたん、種があさっての方向へ 飛んでいってしまうことが時々あります。そのときのゴジュウカラの行動がすごー いのです。

ヒマワリの種が固定したはずの裂け目から外れて飛んでいった瞬間、ゴジュウカラは種を追って飛び出します。水平に飛ぶのではありません。 落ちていくひまわりの種を追っていくのですから地面に向かってほぼ垂直に飛ぶのです。 飛ぶというより地面に向かってダイビングしたような感じで、 羽を少し開いて方向をコントロールしながら種を追って急降下していきます。普通に物が落ちていくよりズ―と速く、真っ逆さまです。 あわや地上に激突か、と手に汗握るとき、地上2m前後のところで種に追いつくと、空中ですばやく種をキャッチ、 その瞬間見事なUターンというより Vターンをしてもとの場所に戻るのです。その間わずか2〜3秒。 あのずんぐりしたボディのゴジュウカラにこのような目の覚めるような飛翔能力があるとは!

ゴジュウカラの高度な飛翔能力に乾杯!!

 
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