八ヶ岳山麓の自然の中で

(山荘の窓辺で綴る随筆です)


ゴジュウカラのすご技

 窓辺にある野鳥の餌台には四季を通していろいろな野鳥が餌のひまわりの種を求めてやってきます。 野鳥たちはひまわりの種を餌台で食べるのもいますし、近くの枝へ持って行って食べるのもいます。共通しているのは持って行く種は1ヶだという点です。

ゴジュウカラはひまわりの種を1個くわえても更にもう1個くわえようとするところが他の野鳥と異なっています。しかしこれはなかなか難しいのです。 ゴジュウカラのくちばしは細長く、上下に開いたくちばしの間に種を1個はさんだ状態で更に1個はさむのですから常識的には無理と思ってしまいます。 人が箸で豆を1個はさんだ状態でもう1個はさもうとしたら困難を極めます。 この困難な作業にいつも挑戦しているのがゴジュウカラなのです。

種を1個くわえた状態で更にもう1個一生懸命にくわえようと頑張っているゴジュウカラも大抵は失敗します。 数回挑戦して「やっぱりダメだった・・」と諦めて1個だけくわえて飛んでいきます。努力がなかなか報われません。 「チョット可愛そうだな」という気持ちと「無理なことをしないで1個ずつにしたらいいのに」と多少突き放したような気持ちが交錯します。

この「2個くわえ」が成功したのを見たことがありませんが、これだけ熱心に毎回挑戦しているのだから成功することもあるのかもしれません。 成功の瞬間を見たい、という願望が次第に強まってきました。双眼鏡を持ったまま餌台を監視していると双眼鏡の重さで手がかなり疲れます。 何とか固定してゴジュウカラのくちばしを凝視します。 ゴジュウカラが来る度に双眼鏡をのぞき込み「又失敗か・・・」としくじり現場ばかりを見せつけられます。 ひょっとしたらゴジュウカラはかなりのアホで不可能だということが分らないのではないか、そんな気持ちになってきました。

これ以上アホなゴジュウカラにつきあっていられない、と思い、観察をそろそろやめようかと思っていたある日、いつものようにやってきたゴジュウカラ。 1個の種をくわえたまま種に向かってエィっとくちばしを突っ込みました。そのまま上げたくちばしの間に見事に種が2個はさまれていました。

すごい! ついにやった! 長い間の努力が報われた瞬間です!
ゴジュウカラはアホでも馬鹿でもありませんでした。
努力と根性の鳥だったのです!!

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その後の観察でゴジュウカラは5〜10回に1回位の割合で成功しているようでした。 成功した瞬間ゴジュウカラは即座に飛び去るため2個くわえているかどうかの確認がかなり難しく、私も何度か見落としていたようでした。

 
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